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リ ン ク



アイルランドで子育て


大きく生まれてくれたとは言え、羽のように軽くもろい赤ちゃんを自宅に連れて
帰ってきた時の不安は、今でもよく覚えています。今考えれば些細なことで心配したり
気を揉んだり、初めての育児にはずいぶん力が入っていました。


ナースの訪問  毎日来るお客さん  子育ては二人で  母乳育児とアイルランド  布おむつ

どこに寝かせるか  自分のケア  手厚い児童手当  予防接種、定期健診  歯が痛い?



2ヶ月頃のリラ


ナースの訪問

退院してすぐに、ディストリクトナースと呼ばれる看護師さんから電話がかかってきました。赤ちゃんの診察をするのに家を訪問するためです。来てみると、クリスティーンというフィークルに住むある農家の奥さんでした。私は会ったことのない人でしたが夫は顔見知りで、知らない人だらけの都会の病院から帰ってきた私にとっては、急に住み慣れた地元に戻った気がしてなんとも言えない安堵感があったのを覚えています。
それに、血液検査、身長体重測定などを自宅訪問という形でやってくれる仕組みにはとても感心しました。出産後の女性にとって、外出はとても大変です。しかもこんな田舎に住んでいると交通の便も悪く、車での外出は一苦労です。結局クリスティーンは何度か訪ねてきてくれ、その度に授乳やおむつ交換、沐浴のさせ方などについて何でも訊くことができ、とても助かりました。
「何かあったら24時間いつでも電話してきて」と携帯電話の番号を渡され、これも精神的に安心材料となりました。



毎日来るお客さん

アイルランドでは赤ちゃんが生まれるとたくさんの人がプレゼントを持って家を訪ねてきてくれます。それもたいていは、事前に何の連絡もなく突然訪ねてきてくれるのです。仲良くはしていても、今まで一度も家にまでは来たことのなかった友人ですら、この時とばかりに駆けつけてくれてとても嬉しかったです。
プレゼントはほとんどがベビー服ですが、親しい友人の中には「これはあなたに」と言って出産を終えた私へのプレゼントを合わせてくれる人もいました。ラベンダーの香りのボディークリームやマッサージオイルは産後の疲労を癒してくれました。プレゼントには必ず女の子の赤ちゃん用のカードが入っていて、お祝いの言葉が手短に書かれていました。どれもかわいいカードばかりなので、壁から壁に紐を吊るして、しばらくの間そこにカードを引っ掛けて飾りました。
とにかくたくさんのベビー服をもらってしまったので、娘が2歳になる頃までほとんどベビー服を買う必要がないほどでした。

子どもを出産して、出産のことや赤ちゃんのお世話、子育ての大変さなどの話題を初めて友人と共有できて、また一つ周りの人とつながりが持てたような気がしました。それと同時にアイルランドの人々が、子どもを持つということがとても尊いことで非常に幸せなこと、として捉えていることが強く伝わってきました。



子育ては二人で
新生児の頃は、24時間授乳とおむつ替えに追われます。出産直後の疲労は想像以上でしたので、ベッドから起き上がるのも大変でしたが、夜中にリラが泣くと、夫がベッドから起きておむつを替え、リラを私の隣まで運んできてくれ、更には授乳後もリラをバスケットに戻してくれたので、私はベッドから起きる必要がなくとても助かりました。

日本の育児雑誌を読んでいると、「赤ちゃんと二人だけの時間が孤独で仕方なかった」、「責任感に押しつぶされそうになった」というお母さんたちの経験談が載っていますが、、「自分が一人でやらなければいけない」というプレッシャーは私にはなく、自然に二人で話し合って、助け合って子育てがスタートしました。夫と二人で宝物でももらったかのような気持ちで始まった子育てです。本当にラッキーでした。


そろそろ下着が小さくなってきたのかな


母乳育児とアイルランド

妊婦検診のたびに、助産婦さんから「赤ちゃんは母乳で育てる予定?」という質問があり、いつも疑問に思っていました。日本では赤ちゃんは母乳で育てるのが基本ですから、こんな質問をされること自体おかしいと感じていたのです。
出産を終えて、どうして助産婦さんがあんなにしつこく聞いてきたかが分かりました。アイルランドでは、赤ちゃんが生まれても母乳育児を試しもせずに最初からミルクで育てる女性が大変多いのです。私がいた部屋にも、数時間おきに一回で使い切るタイプの小さなビンに入ったミルクが大量に運ばれてきていたのを覚えています。確かめたわけではありませんが、私があの部屋で唯一赤ちゃんに母乳を与えていたのだとしても驚きではありません。
もちろん、今ではアイルランドでも母乳の価値が認識され、産婦人科の病院では母乳育児の普及に努めています。母乳に含まれる栄養素がいかに赤ちゃんにとって大切か、また母乳を与えることで築かれる母親と赤ちゃんの信頼関係などについて書かれたパンフレットが配られたり、助産婦さんたちも強引とも言えるほど勧めてきます。しかし実際には母乳で赤ちゃんを育てる女性の割合は、最近の調べでも2〜3割程度なのだそうです。この数字の低さは驚きです。知り合いの女性と話していたら、ドイツなどは9割方母乳育児が普及しているのに対し、アイルランドはヨーロッパでも最低なのだと言っていました。
また、母乳で育てている人でも最初の3ヶ月、6ヶ月だけでその後はミルクに切り替える、ということが多いようです。この頃から職場復帰する女性も多いですし、ミルクに切り替えればベビーシッターを雇って自分が外出できるというメリットもあるためでしょう。
私は結局娘が10ヶ月になるまで続けましたが、その話をすると周りは「よくやったわね〜」という反応です。日本では赤ちゃんが2歳になるまで授乳する人もいますよ、と言うと驚かれます。

母乳育児の進まない一番の理由は、最もアイルランドらしいものでした。人々の意識の中に、「赤ちゃんに母乳を与えるのは貧乏人のすること」という観念があるのだというのです。そして、「赤ちゃんの飲むものにはお金をかけてあげたほうが良い」という考え方のアイルランド人が今でもかなりいるのだそうです。
これは、アイルランドが非常に貧しかった時代から現代に移り変わる過程で、人々の意識の中に創られた価値観と言えそうです。このように時代を背景に培われた価値観は、そう簡単に消えるものではありません。アイルランドの母乳育児の普及には、だいぶ時間がかかりそうです。



布おむつ

妊娠中から、布おむつに関心を持っていました。環境志向の夫のせいもありますが、アイルランドは紙おむつがとても高いので、布おむつを使う方がはるかに経済的なのです。インターネット上の日本の通販で布おむつを購入し、日本の両親に送ってもらいました。
新生児の頃は24時間、2〜3時間おきのおむつ替えで大変でしたが、2歳を過ぎるまでおむつカバーのサイズを変えるだけで使うことができて大活躍でした。
アイルランドでも布おむつは見直されてきており、購入もできるのですが、友人の持っていたのを見せてもらったら妙に分厚くて通気性も悪く、まるで日本の20年前の布おむつのようでした。日本の布おむつの方がはるかに質も良く、すっきりしたデザインでした。
アイルランドでは、紙おむつだけでなく赤ちゃんのおしりふきや女性用ナプキンなどいわゆる消耗品と呼ばれるものが異常に高いです。これを日本人の友人に話したら、「アイルランドの消耗品が高いのではなく、日本の消耗品が世界に比べて異常に安いんだ」とのことでした。紙おむつはパンパースの58枚入りで15ユーロです。日本円にすると2,400円ほどでしょうか。日本に帰省した時に薬局で買った紙おむつは、52枚入りで1,000円ちょっとでしたから、2倍以上という計算になります。



どこに寝かせるか
妊娠中に義理の姉から赤ちゃんを入れるバスケットと組み立て式のベビーベッドをもらいました。どちらもお下がりですが、ベビー用品は使用期間が短いので何の支障もありません。ベビーベッドは、茶色だったのをクリーム色に塗り替えて備えました。アイルランドでは、赤ちゃんが生まれて間もないうちは夫婦の寝室でバスケットに赤ちゃんを寝かせるのが主流です。昔は夫婦のベッドで一緒に寝かせる人も多かったようですが、今では圧死の危険があるということでしないのが常識です。バスケットが窮屈になってきたら、今度はベビーベッドを使います。ベビーベッドは子どもが2〜3歳になる頃まで使います。また、クリニックでもらう育児マニュアルには、6ヶ月を過ぎた頃から赤ちゃんを違う部屋に移して良いと書いてあります。私たちの場合は、リラが1歳4ヶ月の時に別室に移しました。部屋が変わって夜泣くのではないかと思いましたが、いつもと変わらずすっと寝付いて何の問題もありませんでした。


まだどこででも寝られる、7ヶ月頃のリラ


日本で一般的な「添い寝」は、私は一度もしたことがありません。リラが2歳を過ぎてからは、ベビーベッドから普通のシングルベッドに寝かせているので、その脇で本を読んであげたりしていますが、それでも添い寝はありません。リラが同室にいた頃は、月を重ねるごとに物音に敏感になり、私たちは忍び足で寝室に入る、それでもときどき起こしてしまい、ものすごい勢いで泣かれて困り果てることもしばしばでしたが、添い寝が習慣になっている日本の皆さんはどうしているのでしょう??



自分のケア

友人に借りた育児書を読んでいたら、こんなことが書いてありました。「できることはすべてやって、それでも赤ちゃんが泣き止まず、あなたも精神的に疲れ切ってしまったら、赤ちゃんをベッドに寝かせて静かにドアを閉めましょう」。イライラして、つい赤ちゃんに手を上げてしまうよりはずっとましだという考え方のようです。もしかしたら古い本だったのかもしれませんが、これは日本には過去にも現在にもない考え方だなあとびっくりしました。それと同時に、赤ちゃんのことだけでなく、お母さんの気持ちをも救ってくれるような育児書の姿勢には、内心ほっとさせられました。
似たような話は身近にもあって、近くに住む70を越えた友人は、娘が生まれた時にこんな話をしてくれました。「赤ちゃんの体調も良くて、お腹もいっぱい、おむつもきれい、それでも泣くようだったら寝かせちゃって大丈夫よ。しばらくしたら眠っちゃうから」
これは、赤ちゃんの世話をしてあげるのは時間の無駄、と言っているのではなく、とにかく親の方も「ほどほどに」ということらしいのです。「Take it easy」ということです。確かに、初めて親になった頃というのは分からないことの連続でパニックになりがちです。ちなみに彼女は4人の子を育て、今は孫たちの世話に追われるベテランです。4人という子供の数は彼女の時代のアイルランドでは少ないぐらいですが、こんなに子どもの数が多いと、尚更自分のケアをして「ほどほどに」しないと、務まらないのかもしれません。



手厚い児童手当

出産にお金のかからないアイルランドですが、赤ちゃんを授かってからの国からの手当も比較的安定しています。出生届を出すとまもなく、児童手当の手続きをするための書類が郵送されてきました。最近はたくさんの外国籍の人々がアイルランドにも住んでいるので、返送するフォームは「子どもの母親はアイルランド国籍ですか」から始まって、アイルランド国籍でない場合は「どれくらいアイルランドに住む予定ですか」、更には「海外に家族はいますか。ある場合はどのような続柄ですか」という質問まで続き、外国籍の親たちに何らかの理由で児童手当を不適切に配布しないように警戒しているのかなという印象を強く受けました。
ちなみに、この児童手当関する書類は全て母親の名前宛てに送られてきます。
2008年現在、毎月受け取る児童手当は一人の子どもにつき160ユーロです。2人目まではこの額で、3人目が生まれると更に額が増えます。また、この毎月のものとは別に年に4回支給される児童手当もあって、こちらは一回につき250ユーロです。つまり、年間で2,920ユーロもらっている計算になります。お金で子どもが育つわけではありませんが、将来子どもにかかる出費を考えるととても有効なお金です。たいていの賢明な親たちは、貯蓄口座を作って将来に役立てているようです。
日本で子育てをする友人と話していたら「日本では5,000円だったのがやっと1万円になって、それでもすずめの涙だよ〜」と嘆いていました。特に少子化問題を抱えた日本は、国が子育てを支援する仕組みをきちんと作っていかないと、出生率は減る一方だと思います。



予防接種、定期健診
アイルランドでも、赤ちゃんの予防接種と定期健診のサービスが受けられます。全て無料で、予防接種は自分のGPで専門の看護師さんが、定期検診は隣町のタラ(Tulla)にある医療センターで小児科のドクターが担当してくれます。出産後、家を訪問してきたディストリクトナースから赤ちゃん用のカルテをもらいます。予防接種と定期健診時にはこのカルテを持参して、ドクターや看護婦に記入してもらうというものです。身長、体重を曲線グラフで記入するページや、赤ちゃんが何ヶ月の時にどんな種類の予防接種を受けるかなどの情報も載っているので便利です。予防接種の時期をうっかり忘れてしまっても、手紙や電話で必ず通知してくれるのでこのあたりはとても丁寧です。
予防接種は、アイルランドでは基本的に赤ちゃんの太ももに打ちます。2本打つ時は左右の太ももに。もちろん号泣です。看護婦さんには、接種後にCalpolという名前の赤ちゃん用シロップを薬局で買って飲ませるようにと言われました。微量の解熱剤や気持ちを安静にする成分の入った、家庭に一瓶は必ずあると言ってもいい定番の薬です。薬と言っても強くはないので、予防接種後の赤ちゃんの発熱や興奮などを抑えるにはぴったりですし、甘いので赤ちゃんも抵抗なく飲んでくれます。
定期健診は、身長、体重の測定から月齢によって視覚、聴覚のテストもします。また、2歳児の健診では言葉の発達のテストもありました。これが面白くて、自宅訪問したナースがバッグからおもちゃのティーセットを出して、「はい、じゃあティーカップをちょうだ〜い」、「次はスプーンをくれる〜?」と言って言葉の理解力を見るというものでした。リラは、私が日本語で話しかけているせいもあってナースの言葉には耳も貸さず、初めてのティーセットで遊び始めてこれもまたおかしかったです。


夫の実家にて、従姉妹たちと


歯が痛い?

日本の育児書や雑誌には、どんなことでも載っています。小さな疑問や気がかりも細かく説明されていて、ちょっとマニュアル化しすぎなのではないかと思うほどです。でもひとつだけ、どの育児書を見ても載っていなくて、アイルランドでは誰もが口にすることがあります。それは「Teething」といって、歯が生える時のことです。
赤ちゃんの食欲がなかったり、何となくグズグズしていると、周りから「Teethingしてるんじゃないの?」と言われることが多く、最初はどういう意味なのか分かりませんでした。こちらの育児書を読むと、歯が生える時期は赤ちゃんにとって苦痛で、不機嫌になりやすいということらしいのです。また、この他にもTeethingの症状がいくつかあって、おむつかぶれがひどくなる(尿に酸が多くなる)、顔などに発疹が出る、ほっぺが赤くなる、夜泣きをするなどです。日本でも歯が生える時期は歯ぐきがかゆいみたい、などと言って歯がためと呼ばれるおもちゃの一種もありますが、こちらのTeethingはどちらかと言うと痛みがあるという考え方のようです。

日本の育児書に載ってないんだから大したことじゃないはず、と思っていましたが、言われてみるとなるほど、確かにそうかなと思われる節がありました。リラはおむつかぶれがひどくなって、どんなクリームを塗っても効果がないと思っていたら新しい歯が生えていたり、ショーンも夜中に突然叫ぶように泣いて、翌朝はほっぺが真っ赤、まさかと思ったら初めての乳歯が出ていたり。柔らかな赤ちゃんの歯ぐきを突き破って出てくる初めての歯。それも奥歯になればなるほど痛いらしいというのは納得がいきます。
Teethingとは確かにあるものなんだなと今では思っています。

アイルランドでは、Teething用のさまざまな薬も売っています。錠剤、シロップ、歯ぐきに直接塗る塗り薬などです。薬以外にも、何か固いものを噛ませてあげるといいとか、氷をあげると歯ぐきを冷やしてくれて落ち着く、なんていう話もよく聞きます。


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