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アイルランド人と宗教
アイルランド人を観察していると、実にさまざまな顔かたちがあります。ヨーロッパ大陸の人々とは明らかに顔立ちが異なり、「アイルランド人らしい顔」というものがあるように思います。
ブロンドや茶色の髪の毛の人が多いですが、一方で私たち日本人に負けないほどの黒髪を持つ人もいます。また、アイルランド人の典型として赤毛の人がよくステレオタイプとして登場しますが、実際には少数派です。
体格はそれほど大きいとはいえませんが、日本人よりはひとまわりかふたまわりほど大きいようです。近年ではアイルランド人の食生活が乱れ、アイルランドは肥満大国としても有名です。
アイルランド出身(北アイルランドも含む)の著名人たち
アイルランドの概要を読むと、必ず言及されているのがアイルランド国民の宗教です。そこには、国民の8割以上がローマ・カトリック教徒であるとあります。これを読むと、それだけの割合のアイルランド人たちが敬虔なクリスチャンなのかと思いますが、実際はそんなことはまったくありません。若者たちはもちろんのこと、子どもを持つ親の世代のアイルランド人たちでさえ、教会に毎週通っている人たちはむしろ少ないのではないでしょうか。
ダブリンにある壮大な聖パトリック大聖堂
教会による失態が続く近年のアイルランドでは「アンチカトリック」「アンチ教会」の傾向も強く、私の周りにもこのような人々が多いです。
しかし、例えば結婚式はカトリック教会で行うとか、子どもが生まれた時には洗礼を受けさせる、お葬式は必ず教会で行うなど、彼らの信仰心の度合いとは無関係に、風習としてこれらの行事をカトリック式に行うことは一般的とされています。これらの風習は、親戚に合わせる顔がないとか、近所の目があるとか、いわば体裁を守るために行っているようにも見えます。
この傾向は私の住んでいるような村社会の農村地帯において顕著で、日曜日の朝11時前後に村の教会の前を通ると、駐車されている車の数に驚きます。
また、アイルランドでは昔から尼僧など神に仕える人々が学校教育を担ってきた歴史があります。この名残は現代のアイルランドの学校にもはっきり残っており、アイルランドの公立の小学校、セカンダリースクール(日本の中学校と高等学校にあたる)の多くはカトリック系です。
そのため、授業科目の中には「宗教」がありますし、毎朝教室で決まったお祈りをすることから一日が始まります。その地域の教会の司祭は学校を頻繁に訪れますし、今でも学校と教会の結びつきが強いのが特徴です。
私の夫は、「自分はカトリック教徒ではない」と明言していますが、教会の記録上では洗礼もすべて受けているし、れっきとしたカトリック教徒です。このような無宗教のアイルランド人たちが、どんどん増えてきているように思います。
とは言え、やはりある一定以上の世代の人々にとって、宗教(=カトリック)は彼らの道徳心を支えるよりどころであり、、びっくりするほど信仰心があります。日曜日に限らず時間があれば教会に通う人や、教会の前を通る時には必ず手で十字を切る人など、日常生活の中におけるカトリック教の色は非常に濃いと言えます。
アイルランドに暮らしていると、カトリック教徒であるかないかにかかわらず、この宗教がアイルランド人の精神構造を形成する土台になっているように感じることがよくあります。