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アイルランドで結婚




結婚当初に住んだ家。舗装のされていない道が延々と続きました


2004年春にアイルランドで入籍しました。うろ覚えなことも多いですが、
できるだけ具体的な手続きの様子を書いてみました。これから
アイルランド人のパートナーと結婚予定の方の参考になれば幸いです。


国際結婚という言葉  結婚式をしないと結婚できない  結婚式の当日

アイルランド人になれない日本人  アイルランドに正式に住む  住んでみて変わったこと



国際結婚という言葉

夫がアイルランド人ですと言うと、たいてい「国際結婚なんですね」などと言われます。二人のうち一人が日本人で、もう一人が外国人だとこの「国際結婚」という呼び名になるようですが、では英語に「インターナショナルマリッジ」という言葉があるかというとそんなものはなく、そもそもその概念さえこちらにはありません。
外国人と結婚するということへの日本人の特別視が、この言葉を生んだようです。なので、個人的には国際結婚という言葉にはどうもしっくりいきません。
ただ、結婚の手続きをする際には確かに国際結婚の場合少し手間がかかるので、そういう意味では日本人同士で結婚をするのとは違うとも言えます。また、育った環境や習慣などが異なる二人が共に生活していく上で起こる摩擦(驚きや疑問、反発などなど)の意味を込めてこの言葉を使うこともあるようです。



結婚式をしないと結婚できない

アイルランドで結婚をする場合、二つの選択肢があります。一つはカトリックの教会でする挙式、もう一つは役所でする式です。日本では役所に婚姻届を出せば、もうそれで法的に夫婦となりますが、アイルランドではどちらかの方法で結婚式をしないと結婚できません。
私たちはカトリック教徒ではないし、教会でたくさんの参列者に囲まれて盛大に・・という挙式に憧れもなかったので、質素に役所結婚(シヴィルセレモニーCivil Ceremonyと言います)で済ませることにしました。
うろ覚えですが、お隣の県リムリックの役所に事前に出向いて、そこで日時を予約、何十ユーロかの料金を払って指輪の交換をしたいかなど、式の内容を確認しました。



結婚式の当日

当日は、役所の職員の女性が小さな部屋で式を執り行ってくれました。私は簡単なドレスに夫はジャケットをはおっただけで、参列者も夫の両親、弟、友人二人と質素にしました。
結婚をする際、必要になるのが「保証人」(ウィットネスWitnessと言います)です。この保証人は新郎新婦にそれぞれ一人ずつ必要で、結婚証明書に署名をするという大事な役目をします。保証人の署名は結婚証明書に一生残りますので、大概は親類か近しい友人に頼みますが、特に規制はなく、極端に言えば通りすがりの見知らぬ人でもいいそうです。私たちの場合は夫の両親にお願いしました。
式は順調に進みましたが、ちょっと困ったのは新郎新婦が職員のあとに続いて言わなくてはならない誓いの言葉でした。私たちの数年後にやはりアイルランド人と結婚をした日本人の親友は、せりふのコピーを前もってもらえたそうなのですが、私たちの時はぶっつけ本番、夫はいいにしても、私は英語力が未熟な上に普段聞き慣れない語彙にしどろもどろ、挙句の果てには「lawful husband(法的な夫)」を「Awful husband(ひどい夫)」と言い間違えて、あとから笑われました。
何とか式も無事に終わって、これで法的に夫婦となりました。記念撮影をして、家族で実家のエニスに戻ってホテルで食事をしました。



アイルランド人になれない日本人

結婚式が終わると、アイルランド人の友人たちからよく「これであなたもアイリッシュになったのね!」と言われました。しかし、私は彼らに残念ながらそういう仕組みにはなっていない、ということを伝えなければなりませんでした。これがもし私がフランス人であれば、彼らの言うように私もアイルランドの国籍が取れるのですが、日本人であるが故にそうはいかないのです。
日本の法律では二重国籍が認められていないためです。
もっと言うと、アイルランド人との結婚によって私もアイルランドの国籍を取ることは可能なのですが、それによって今度は日本の国籍を放棄しなければならないということです。

結婚をする前に、私もインターネットでずいぶんいろいろと調べてみましたが、結局外国人との結婚によって日本国籍を棄てて相手の国の国籍を取得するという人はごく稀のようです。私自身も、結婚をすることと自分の国の国籍を棄てることとは気持ちが全く結びつかず、また日本国籍のままでも特に日常生活で不自由がないと聞いていたので、国籍は保持したままです。
実際には、アイルランドに長期滞在するためのスタンプを定期的にもらいにいかなくてはならないのと(下記の「結婚後の手続き」で詳しく説明しています)、ヨーロッパに旅行に行く際夫はEUパスポートの窓口でほぼ素通りのところを私は日本のパスポートで長蛇の列だったり、アイルランドの国民投票や総選挙の権利がないなどの不便さがあります。
また、もし日本国籍を放棄して相手の国の国籍を取得しても、離婚や死別など何らかの理由で日本国籍を再取得することもできるそうです。これは「再帰化」と呼ばれますが、外国人が帰化をするよりも手続きはずっと安易のようです。



アイルランドに正式に住む

結婚式の数日後には、役所で自分たちの結婚証明書のコピーを手に入れることができました。これを持って、今度は私一人でエニスの警察署の中にあるイミグレーションオフィスに出向きました。ここで、担当の人に法的にアイルランドに長期滞在するためのスタンプをパスポートに押してもらいました。アイルランド人との結婚による長期滞在のスタンプは5年ごとに更新してもらいます。この時に、顔写真も持参していわゆる外国人登録カードのようなものも作成してもらいました。こちらも5年間有効で、ときどき海外から帰ってアイルランドに再入国する際に提示するように言われます。
これで滞在ビザなどの心配をせず、正式にアイルランドに住めるようになります。



住んでみて変わったこと

幸運なことに、私は結婚以前にもアイルランドに何度も来ていたので、ある程度どのような国かが分かっていました。友人も何人かいましたし、もともと好きな国だったのでアイルランドの歴史や文化に関しても多少の知識があったことは大きかったと思います。
しかし実際に住んでみると、今までは全く見えてこなかった等身大のアイルランドの人々、彼らの営みが少しずつ時間をかけて見えてきました。こればかりは、何度アイルランドを訪れていてもある程度の期間アイルランドに、アイルランド人と共に暮らしてみないと見えてこないもののようです。それまで自分が思い描いていたアイルランド人像や彼らの暮らしぶりが、いかに現実離れしていて、全くの偶像であったことは今にして考えると全くの驚きです。
彼らの社交場での立ち居振る舞いのパターンを知ることによって、また今アイルランドの政治で何が起こっているか、家族のあり方や仕事のし方、更にはどんなテレビ番組をみんなが見ているかなどのあらゆる要素を共有することによって、私にとっては未知の人々、半分エイリアンも同然であったアイルランド人の素顔がやっと見えてきました。そして数年もすると、自分が住んでいるこの社会に不安を覚えることもなくなりました。

しかし、アイルランドに住んでみて一番の収穫だと思えるのは、今まで見えなかった自分の国、日本の良いところがたくさん見つかったことです。
正しく言い換えれば、外から日本を見ることによって良いところも悪いところも客観的に把握することができるようになった気がします。日本にいた頃は、欧米の方が優れているというようなコンプレックスが付きまとって、日本人である自分たちを卑下するような趣がどうしてもどこかにあったと思うのですが、今では日本の社会のあり方や長い歴史を誇る数々の芸術、日本人独特の道徳観などをアイルランドの人たちに胸を張って説明することができます。自分の中で、やっと対等になれた気がするのです。
高校時代の担任の先生が、よく「自分の国を知ることが国際人になるということ」と言っていたのを思い出します。あの頃は先生の言葉の意味がいまいち分からずにいましたが、きっと海外の人たちと対等に渡り合っていくには、自分の国を外側から冷静な目で眺め、理解した上でそれをきちんと紹介できることから始まるのかな、と思います。


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