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リ ン ク



アイルランドでマタニティー



2005年10月9日のよく晴れた日曜日の朝、我が家に女の子の赤ちゃんがやって
きました。名前は私の母が私につけたくて断念した「リラ」にしました。
モンゴメリの小説「赤毛のアン」の末娘の名前です。
2007年8月9日には、ショーンという名の元気な男の子が誕生、
我が家の一姫二太郎は毎日すくすく育ってくれています。


妊娠が分かってから  パブリックで子供を産むということ  検診の様子

妊娠中の食生活  赤ちゃんの性別  出産間際



生まれて二日目のショーンの小さな手


妊娠が分かってから

アイルランドに住み始めて2回目の冬、お腹に小さな命が宿っていることが分かりました。
嬉しい気持ちはもちろんあったものの、海外で出産をするということへの漠然とした不安もかなりありました。

市販の妊娠検査薬でポジティブと分かってから最初にしたことは、GP(GeneralPractitionerの略)に行ったことです。このGPを日本語に訳すと「一般開業医」でしょうか。日本では風邪を引けば内科へ、耳が痛ければ耳鼻科へという風に症状に応じて個人が専門医へ直接出向きますが、アイルランドではお医者さんにかかりたい時はまずこのGPに行き、ここで必要であればさらに専門医を紹介してくれる、という仕組みになっています。裏を返すと、例えば軽い風邪とかであればGPが診察をしてくれ、薬も出してくれるので、わざわざ専門医にかかる必要がないというわけです。
アイルランドでお医者さんにかかるのは、これが初めてでした。フィークルにもGPが一つあるし、お隣町に行くと数軒あるということでしたが、私の場合夫の実家が車で30分ほどのエニスという町にあるし、週に2回はエニスに行っていたので、ここでGPを捜すことにしました。義理の姉が「女医さんでいい人がいるわよ」とエニスの中心にあるGPを紹介してくれ、さっそく予約をしました。
このGPにはドクターが3、4人いて、一人のドクターを除いて窓口で働いている人も全て女性、それも30〜40代とみんな若くて待合室も女性雑誌やら新聞、子供向けの絵本、積み木などもあってアットホームな雰囲気に安心しました。
私の担当の女医さんは笑顔のかわいい30代の女性で、白衣の下はおへその出たシャツにジーンズ、とてもドクターとは思えない格好ですが、ていねいで信頼のできる素敵な方でした。まずは尿検査で妊娠しているかどうかを確認。「ポジティブね」と言われ、「そうですか」と答えると「この結果はあなたにとって良い結果なの?それとも悪い結果?」と聞かれびっくり。「もちろん良い結果です!」と答えると、「そう、それじゃあおめでとう!」と言われました。ここで、これから出産までの検診の説明を受けました。私の場合、健康保険には加入していましたが、加入時から一年経過してからでないと適用対象とならないので、今後の検診はパブリックで行うことにしました。というのも、アイルランドでは妊娠、出産はすべて保険の対象になるのです。また、パブリックにすれば妊婦検診はエニスのクリニックで受けられるという手軽さもありました。
二人目を妊娠した時も、私は結局一人目の経験からパブリックを選択しました。この頃には私の健康保険を使ってプライベートで検診、出産する手もありましたが、とにかく前回の検診が手軽だったのと毎回の超音波検診や3Dの胎児の写真などにはあまり興味がなかったせいもありました。

※アイルランドの健康保険事情
日本では、企業で働いていれば社会保険、自営業などの場合は国民健康保険というように、日本に住んでいる限り必ず保険に入ることが義務づけられていますよね。でも、アイルランドでは健康保険(HealthInsurance)は民間企業によって運営されており、加入も本人の任意なのです。健康保険をビジネスにしている企業はアイルランド国内にいくつかあり、最大手はVHI、これより少しリーズナブルなBUPAです。上記にもあるように保険は加入したと同時に適用されるわけではなく、マタニティーの場合は一年経過してからでないと適用になりません。病院にかかる予定があって、その直前に保険に入って使った後すぐにやめるといった悪用を防ぐためなのでしょう。ちなみに月々の加入料は、両社とも40ユーロ前後です。



パブリックで子供を産むということ

パブリック、つまり国が運営する医療機関のもとで子供を産むということは、どういうことなのかについてお話します。
まず、GPでは「あなたがパブリックかプライベートかを問わず、ここではマタニティー健診は全て国の補助でまかなわれているのよ。従って、今日の初診代のみでその後の検診はノーチャージです」との説明を受けて初診代40ユーロを払いました。つまり、GPでの検診はどちらを選択しても無料、パブリックを選択するとクリニックでの妊婦検診、出産の際の費用もすべて無料。プライベートを選択すると有料だが、保険に加入していれば保険会社が全てカバーしてくれるので、こちらも実際にはノーチャージというわけです(但し、出産時にトラブルがあったりして保険会社が提供するカバーの限度額を越えた場合は、実費となります)。

パブリックには難民の人たちや貧しいアイルランド人がたくさんいて、検診のあるクリニックでも出産をする病院でも荒く扱われるという話を聞いたことがありましたが、行ってみると妊婦さんたちはほとんどが普通のアイルランド人で、看護婦さんや助産婦さんの応対も特に問題はありませんでした。私のクリニックはエニスでしたが、これがダブリンなどの大きな都市だとこのような問題がひょっとしたらあるのかもしれません。

ちなみにプライベートを選択すると、上記のクリニックではなくコンサルタントと呼ばれる所で毎回の検診を受けることになります。このコンサルタントはいくつかあってGPでリストをもらいましたが、残念なことにクレアには一つもないのです。なので、リムリックかゴールウェイというお隣のカウンティーまで車で行かなくてはなりません。話によると、長いこと待たされるなどの状況はパブリックとあまり変わらず、でも毎回の検診ごとにスキャンがあって、胎児の写真もプリントしてもらえるなどの待遇の違いがあるようです。出産をする病院はパブリックでもプライベートでも同じで、プライベートの場合個室が与えられるという以外は待遇は同じのようです。

このような仕組みのため、アイルランドでは子どもを産むことにお金がかかるという感覚が全くありません。もともと子沢山のカトリックの国ですので、制度が作られた当時からこの基盤はあったのでしょう。貧富の差を問わず、誰でも子どもを安心して産めるというのはとてもいい社会の仕組みですし、国全体にとってもプラスに機能しているのではないかと思います。



検診の様子

GPからクリニックに紹介状を書いてもらい、初検診の日程が手紙で送られてきました。エニスのクリニックは一般病院の敷地の別棟にあり、パブリックで出産予定のカウンティークレアの妊婦たちが検診に訪れる唯一の場所です。私の場合、自宅からエニスまでは車で30分ほどですし、エニスの実家からクリニックまでは徒歩で行ける距離なのでとても便利でしたが、中には車で1時間以上かけて通う妊婦さんも当然いたことでしょう。日本では最近産婦人科が減少して、検診に通うのが大変、出産する病院が近場にないということが問題とされているようですが、私の住んでいるところではこれはもう当たり前ですし、誰も文句は言いません。

初診ではまず個室に通され、カルテ作成のための質問を受けました。本人や家族の病歴から今までの妊娠経過、更には双子が家系にいるか、夫は喫煙をするか、生まれる赤ちゃんの宗教は、という欄もありました。作成されたカルテは「チャート(Chart)」と呼ばれ、管理者は本人です。自宅に持ち帰ることができ、検診時には持参して検診の結果を書き込んでもらいます。その後は尿検査、血液検査、身長体重の測定、簡単なモニターによるスキャンをしました。一方GPでは毎回ごく簡単な検診(尿検査、触診、胎児心音、血圧測定)のみですが、私の場合は若い女医さんだったこともあり、ちょっとした疑問や心配事などはすべて彼女に聞いていました。

アイルランドでの妊婦検診は、GPとクリニックが交互にしてくれる仕組みになっています。初期は、クリニックでの検診の4週間後にGPでの検診、続けてまた4週間後にクリニック検診という形で、後期に入るとこれが2週間おきになります。更に、妊娠31〜32週頃には同じエニスの一般病院内にある放射線科で超音波検診を受けます。



妊娠中の食生活

日本にいる母に頼んで、日本語のマタニティー本を郵送してもらいました。これプラスGPの初診でもらった妊婦さんのためのハンドブックもよく読んでいたのですが、妊娠中の食生活に関して、日本とアイルランドでは言っていることがずいぶん違うことに気がつきました。まずはレバー。GPでの初診で、妊娠初期に食べてはいけないものをドクターから言われたとき、最初に出たのがレバーでした。もらった冊子には「ビタミンAの摂り過ぎは妊娠中に良くない」という理由が書かれていましたが、日本ではレバーは妊娠中のおすすめレシピに載るほどの食品です。鉄分が豊富で貧血予防にもなるとされています。
また、生の卵、肉、魚も絶対に避けるようにとアイルランドでは言われていますが、日本のマタニティー本には献立の例にお刺身が載っていたり・・・。

食事には気をつけていただけに、正直「どっちを信じればいいの?!」という状況には困りました。でも、結果そんなに神経質にならなくてもいいのかな、という気持ちになり、同時にきっとここにも食文化の違いが反映されているのだろうと思うようになって、バランスのいい食事をすることを第一に考えることにしました。



赤ちゃんの性別

妊娠中期になってくると、よく聞かれたのが「もうお腹の赤ちゃんの性別は分かってるの?」という質問でした。特に日本の友だちからは「どっちか教えて」とよく聞かれましたが、私たちは結局出産まで性別は知りませんでした。GPのドクターのアドバイスもあって、超音波検診の時に聞いてみたのですが、「分かりません」の一言。しかも、モニターで探してくれる様子もなく、まるで「それは教えられません」と言っているかのような返事だったために、私もそれ以上聞けずに終わってしまいました。

アイルランドでは赤ちゃんの性別を知らない人の方が多いようです。もっと言うと、知りたくない人の方が多いようなのです。赤ちゃんは授かり物という意識が高いためなのか、どっちがほしいとかどっちがいいとかの会話は敬遠される雰囲気があります。また、知らない方が生まれてきた時の楽しみがある、それまでとっておく、というのはよく聞きます。私の感覚では、分かっていた方が産後の準備がしやすいのに・・・と極めて現実的に捉えてしまうのですが、赤ちゃんの性別を秘密に、誰にも知られず楽しみにとっておくというのがどうやらアイルランド流のようです。



出産間際

35週目のクリニックでの検診で、担当の助産婦に突然「35週にしてはお腹が小さ過ぎる」と言われました。臨時のモニター検査をして、ドクターに「明日リムリックの産婦人科病院に精密検査に行ってほしい」と言われた時は、もう頭の中が真っ白になり、不安でいっぱいになりました。それまで順調だっただけに、思いがけない結果でした。夫に「何でもないよ、心配ないよ」と励まされながらも、その夜はあまり眠れなかったのを覚えています。翌日車でリムリックに行き、超音波検診で胎児の大きさ、羊水の量などを調べてもらいました。その結果、「羊水の量はやや少なめだが正常値、胎児も平均よりもやや小さめだが問題はなし」とのことで一安心。

出産時に駆け込む病院を事前に確認できたことはよかったのかなとは思いますが(何しろ場所がどこなのかも分かっていなかったので)、あの助産婦の判断には今でも腹が立ちます。日本では検診時に子宮底長を測るのが当たり前ですが、アイルランドにはこれがありません。おそらく、私が長身なのと東洋人の体格を見慣れていない彼女には、私のお腹が小さく見えたのでしょう。それにしても、日本では「妊婦さんの体格はさまざまなので、お腹が大きい小さいという見た目で判断すべきではない」と言われているのに、プロである助産婦にまさに見た目で判断されたのですから、これにはさすがに参りました


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